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ラムゼイハント症候群と温病学

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2017年5月7日 03:05:06

ラムゼイハント症候群と温病学

ラムゼイハント症候群

ラムゼイハント症候群(帯状ヘルペス)は、ヘルペスウイルスが耳の近くの顔面神経に影響を与える顔面の筋肉の麻痺をおこす病気です。
顔面神経麻痺
麻痺や強い痛みのほか、耳鳴り、難聴、悪心、嘔吐、めまい、眼振などの症状を引き起こすことがあります。
ラムゼイハント症候群は顔面神経麻痺を起しますが、同様にベル麻痺も顔面神経麻痺を起します。


似ているようで全く違うベル麻痺とラムゼイハント症候群

ラムゼイハント症候群はめまいや難聴、耳鳴りといった内耳障害と呼ばれる耳の病気を引き起こします。
ベル麻痺は顔面神経麻痺のみです。
耳鳴りや難聴の治療ではベル麻痺とラムゼイハント症候群の違いを知る必要があります。


ベル麻痺とラムゼイハントの違いは原因

顔面神経麻痺が同じように起こる病気ですが、原因となるウイルスが違います。
  • ベル麻痺は単純ヘルペスウイルス(HSV)
  • ラムゼイハント症候群は水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)
このように症状と原因ウイルスがはっきりと分けられる病気と長く考えられていました。しかし近年検査機器の発展と同時に顔面神経麻痺や耳鳴りが起こった段階でははっきり分けられないことがわかってきました。。


ベル麻痺(HSV)とラムゼイハント症候群(VZV)の間に『無帯状疱疹ヘルペス』

ベル麻痺とラムゼイハント症候群の間にもう一つ『無帯状疱疹ヘルペス』という、 ベル麻痺の症状でありながら、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因という場合があることがわかってきました。
ベル麻痺とラムゼイハント症候群の大きな違いとしては、治りの違いがあります。
ベル麻痺の原因である単純ヘルペスウイルス(HSV)は治りが非常に良いという特徴があります。
対して、ラムゼイハント症候群の水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)は顔面神経麻痺や難聴、耳鳴りの治りが悪い、治らない危険があります。
どちらにしても、早期治療(3日以内)とウイルスへの治療が必要なのは言うまでもありません。


ベル麻痺とラムゼイハント症候群を判断するのは不可能

ベル麻痺(自然治癒)とラムゼイハント症候群(自然治癒不可)はどちらも顔面神経麻痺を引き起こしますが、治療が必要な3日以内にどちらかを判断することは不可能です。
現在では顔面神経麻痺のみの症状で、ラムゼイハント症候群特有のめまいや難聴、耳鳴りの症状がなくてもウイルスに対する治療をするのが一般的となっています。


鍼灸治療で遭遇する顔面神経麻痺や耳鳴りの患者さん

ほとんどが病院での誤診により、症状が長引いた症例で治りが悪くなってしまった状態が多くあります。
顔面神経麻痺で皮膚科や内科へ行ってしまうと間違った診断を下してしまう場合があるようです。
最初に顔面神経麻痺でも耳鼻咽喉科に最初にかかるべきではないだろうかと思ってしまいますが。。。
鍼灸治療を選択する時すでに、病院で治らなかった状態。つまり、長引いた症状を抱えての来院となります。
このような状態では鍼灸治療や漢方など一般的な東洋医学の治療法では改善することが難しいといえます。


東洋医学には傷寒論と温病学がある。

東洋医学といえば、プラシーボ効果(思い込み効果)や民間療法のように考えておられる方が多いと思います。
しかし東洋医学の歴史は西洋医学以上にウイルス性の疾患との戦いの歴史でした。 おびただしい犠牲と実験の中で約2000年前に傷寒論が誕生し、葛根湯や小青龍湯、柴胡剤など日本における、現代の風邪症状の治療には必須となる漢方薬が開発されました。
そして300年前に温病学という考え方が誕生し、銀翹散や天津感冒片といったウイルスが原因となる症状に対する漢方薬が開発されました。
漢方薬
温病学の方は歴史が浅いためか、日本の医学界ではまったく相手にされていません。おかげで温病学に関わる薬は保険適用されていないのが現状です。
中国では傷寒論や温病学の薬は垣根なしにドンドン使用しています。


ラムゼイハント症候群40例への西洋医学と東洋医学の併用治療で使われた柴胡解毒湯とは?

中国では年間数万篇の東洋医学関連の論文が発表されています。
2010年の論文でラムゼイハント症候群への西洋医学に依る抗ウイルス薬と併用した漢方治療と鍼灸の治療が載っていました。



そこで使用されていたのが柴胡解毒湯
長春中医薬大学の劉渡舟先生(故人)が開発したお薬です。
劉渡舟
柴胡解毒湯の元になっているのが、解毒湯(温病学系統の漢方薬)です。
温病学では衛気営血弁証という診察診断法が重要視されていますが、柴胡解毒湯は衛気営血でも最も重症とされる、血分に相当する病に対して処方するお薬です。


ラムゼイハント症候群への効果は?

完治
西洋医学のみの治療と東洋医学を併用した治療の組 40人中29
西洋医学のみの治療の組 35人中9

西洋医学と東洋医学の治療を同時に行うことに対しては批判もありますが、結果としては完治率が高かったということです。
中国ではラムゼイハント症候群に対しては温病学の漢方を処方することが標準となっています。


ラムゼイハント症候群への鍼灸治療には温病学の考え方を取り入れる。

温病学の特徴が三焦弁証と衛気営血弁証と呼ばれるものです。
それぞれ、目に見える症状や状態を参考に、病の状態が深いか浅いかを東洋医学の考え方によって判断します
ラムゼイハント症候群が衛気営血弁証の血分の漢方薬が使われある程度の改善が見られているということは、温病学からみても重症と言えます。
三焦弁証や衛気営血弁証は東洋医学独特なもの。漢方薬だけでなく鍼灸治療にも応用が効きます。


温病学を鍼灸治療に活かす

三焦弁証や衛気営血弁証に合わせたツボやハリの刺す方法を工夫することが可能です。
時間が経ったものでもある程度の改善はみられるが、やはり初期に西洋医学と併用するのがオススメと言えます。
日本では温病学の研究が遅れており、まず保険が効かない漢方薬ばかりですので病院での治療は難しいでしょう。 鍼灸ならば併用することは可能かと思います。
担当医師と相談して、東洋医学の治療も併用できるか検討してみるのもいいでしょう。



まとめ

  • ベル麻痺とラムゼイハント症候群を判断することは難しく
    ラムゼイハント症候群は初期対応を誤ると治し難い
  • ラムゼイハント症候群への東洋医学の治療法-中国では温病学が標準
  • 鍼灸治療でも温病学の考え方を取り入れることが可能



突発性難聴の鍼灸治療について


木もれび鍼灸院院長 木もれび鍼灸院院長弓削周平

長春中医薬大学 中医学士
長春中医薬大学 客員教授
吉林省公認 推拿師
北摂中医鍼灸研究会 代表


学生時代に父親がうつ病を発症。病院に行ったにも関わらず、完治することはなかった。この経験から精神疾患とそれに付随する不定愁訴(腰痛や不眠症、耳鳴りなど)で苦しんでおられる患者様と向き合おうと、伝統医学を極めるために中国の中医薬大学へ留学し、中医学と東洋医学(漢方・鍼灸)を体系的に学ぶ。日本に帰国後さらに日本伝統鍼灸を学び研鑽を積む。
この針治療が患者様からとても好評で多くのお喜びの声を頂いている。

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