機能障害別の男性不妊
▽造精機能障害
男性不妊の原因を大半を占めるのが、精子をつくる機能に障害がある造精機能障害です。
精巣やホルモン分泌の異常が引き起こすもので、精子の数が少ない乏精子症、精子がつくられない非閉塞性無精子症などに代表されます。 造精機能障害には、先天的理由によるものと、後天的な理由によるものの2通りがあり、先天的に精子がつくれられない染色体異常の場合の治療法はなく、また精子形成があっても治療する方法は難しく、妊娠を希望する場合は体外受精、顕微受精に頼らなければなりません。後天的には、耳下腺炎などで精巣にウイルスが侵入し精巣炎を起こした場合や精索静脈瘤などがあります。
また造精機能障害のほとんどは、原因がはっきり特定のてきない『突発性』で、原因が明らかになるもののほとんどが『精索静脈瘤』です。突発性造精機能の改善のために薬物療法などを行ない、精子の数や質の向上を図りますが、個人の持つ造精機能により効果の出方は変わります。軽度の場合、数か月の服薬や注射で精液の状態がよくなる場合もありますが、あまり期待はできないというケースも多いようです。精索静脈瘤の場合には、手術療法がおこなわれます。 射精精液の中に良好精子がみつからない場合は、精巣から直接精子を回収し顕微授精を行います。
▽精路通過障害
精巣でつくられた精子は、精巣上体、精管を通って射精されますが、この通り道が炎症によって詰まる、または細くなっていることにより閉塞性無精子症や精子の数が少ない乏精子症となるものが精路通過障害です。
原因としてあげられるものは、先天的には先天性両側精管欠損症(CBAVD)、後天的には精巣上体炎、精嚢部狭窄、逆行性射精、鼡径ヘルニアやパイプカット術後などです。
精巣上体に障害があるものは、精巣上体に炎症がある、もしくは先天的に精巣上体が発育不全である、精管閉塞に伴う二次性閉塞など、精管に障害があるものには、鼡径ヘルニア手術による閉塞、パイプカット、先天性両側精管欠損症、射精管に障害のあるものは、尿道炎や外傷、射精管閉塞症などがあげられますが、原因不明のものも多くあります。
鼡径ヘルニア、パイプカット術後の閉塞性無精子症の場合、精管精巣造影検査などで精路の通過性を調べ、可能であれば精管同士をつなぎ合わせたり、精管と精巣上体管をつなぎあわせることにより、精路を再建する手術を顕微鏡下で行う場合もあります。しかしこれが困難な場合は、精巣または精巣上体から直接精子を回収し、体外受精、顕微授精が行われます。
▽副性器機能障害
精嚢や前立腺に炎症を起こしたことが原因で、精子の動きが悪い、または運動後に低下がみられ、受精しにくくなるものを副性器機能障害といいます。
精液中の白血球が基準値(100万個/1ml未満)より多く検出されることでわかります。この場合、抗生物質が処方され、服薬の効果とその後の精液検査の結果によって治療方法が決められます。
精嚢や前立腺の炎症の原因の多くは、クラミジア感染ではないかと言われています。
▽性機能障害
性機能障害は、勃起障害、射精障害に大別され、精神的な問題の場合、機能的な問題な場合、またそれらが複雑に絡み合っている場合があります。
勃起障害(ED)は、ストレスなどが原因で起こる心因性のものと糖尿病や骨盤内手術後などに起こる器質性のものに分けられ、これらにはバイアグラが処方され、正しく服用することにより効果が得られます。脊髄損傷などによる場合は、神経の損傷程度によりバイアグラが有効な場合もありますが、電流刺激による射精、もしくは精巣より直接精子を回収することもあります。
また性欲の減退、性に関する嫌悪感につながる心の障害や、ストレスになっていることが原因の場合、心療内科などの受診が必要になってくることもあります。
射精障害は、逆行性射精や膣内射精ができない場合があり、逆行性射精では、射精感はあっても精液量が少ないことが特徴です。
▽その他
男性不妊の原因の多くは、精子に問題があるものがほとんどですが、その原因が特定できるものは少なく、原因不明であることが6割といわれています。
また精子の問題は、多岐に渡り、そして複雑です。身体的な障害(脊髄損傷など)、内科的疾患(糖尿病、腎不全など)、過去の病歴(精巣ガンなどでの抗癌剤や放射線療法)や染色体異常(クラインフェルター症候群、ロバートソン転座など)が男性不妊を引き起こしていることもありますので、全身状態、日々の生活、過去の病歴や手術歴など細かいところまでを確認することも大切です。
男性不妊の鍼灸治療